第十六回 後藤千枝さん (Early Childcare Educator)

Masashi NakagomeMasashi Nakagome

カナダで活躍する日本人、第16 回目はカナダのコミュニティーカレッジ卒業後にワークパーミット(PGWP)を取得、1年間アルバータ州の保育園で働いた後に一旦日本に戻られ、Labor Market Impact Assessment(LMIA)取得に成功。2016 年2月にExpress Entryでカナダ永住権取得後、ロッキー山脈に囲まれたアルバータ州の保育園で仕事を再開された後藤千枝さん(以下敬称略)をご紹介します。

後藤さんは個人のフェイスブック、“2.3.4歳のあそび 日本と海外” を持たれ、2~4歳向けの”あそび”について定期的にポストされています。日本の遊びとは少し違った、ユニークな海外の遊びを中心に紹介され、幼児が口に入れても安全な材料を使った遊びや、自然の中の遊びなどさまざまな遊びをシェアされています。


QLS: 永住権取得までを振り返ってみていかがですか。

後藤: 本当にこれまで色々あったので、ここまで辿りつけてびっくりしています。特に永住権取得のために全力でサポートしてもらい、日本に一旦戻らざるをえなくなってからも、いつ戻ってくるのかといつも気にかけてくれていた職場のディレクターには本当に感謝の気持ちで一杯です。また、この壮大なロッキー山脈に囲まれた保育園で、元気いっぱいの子供たちの成長を見守りながら仕事ができてとても嬉しいです。休日には、ハイキングやマウンテンバイキングやロッククライミングやスノーボードなど自然を満喫できて、大変充実した生活を楽しんでいます。

QLS: 後藤さん自身、日本やオーストラリア、カナダ・バンクーバーでも経験を積まれていますが、アルバータ州に定住を決めた理由はありますか。

後藤: オーストラリアの田舎で過ごした1年半とカナダで過ごした半年で、公共の場で見る子供たちの姿が日本とは違うように見えて、子供や幼児教育、Parentingに興味をもちました。でも最初からアルバータ州を目指したわけではなく、最初はバンクーバーのコミュニティーカレッジを卒業して、もっぱらバンクーバーで仕事を探していました。ところが当時バンクーバーでは就職がとても厳しく、たまたま求人募集をみつけたのがアルバータ州のロッキー山脈に囲まれた街だったんです。面接に来た日は周りを見回しても山しかなくて(笑)とにかく雄大な景色に圧倒されてしまいました。

QLS: 現在勤められているデイケアプログラムは他と比べて違いはありますか。

後藤: そうですね、私が働いている保育園では、とにかく教室にいるよりは自然の中で遊んだり、遊びながら学んでいく時間が多いです。そういう中で子供たちが体いっぱい使って成長していく姿を見るととても嬉しくなりますね。エルク(アメリカアカシカ) がデイケアのすぐ近くまで現れることもあるんですよ。子供たちはそれを本当に楽しみにしています。自然との触れ合いの中で子供たちの感情が豊かになっていくのを感じます。

また、私の勤めるデイケアでは幼児教育のテクニックの一つであるポジティブガイダンス、つまり、“・・してはだめ”と否定するのではなく、肯定文で子供に教え、諭すことを徹底していますが、カナダでは保育園だけでなく家族も子供の教育に対する意識が高く、同じようにそれを実践しているのが特徴だと思います。保育園と家庭の教育が分断されることなく一貫しているんですね。

それから、こちらはコミュニティーとのつながりがとても強いです。例えばデイケアの隣に畑があって子供たちはそこで野菜を育て、自分で育てた野菜を食べ、コミュニティー主催の週1回のファーマーズマーケットに自分たちの育てた野菜が並ぶのを目の当たりにします。そうやって自分たちの育てた野菜がどうやって市場に出ていくのかを肌で学びます。図書館に行ってコミュニティー主催の絵本の読み聞かせのイベントに参加することもあります。

QLS: なるほど、都会の保育園のイメージとはかなり違いますね。待遇面や職場環境はどうですか。

後藤: アルバータ州には保育士のレベルが1から3まであって、会社から支給される時給に加えて、受けたトレーニングの長さによって時給2ドルから6ドルまで、政府からの補助があります。わずか数ドルの違いだと思われるかもしれませんが、これが月単位、年単位では大きな差となって現れます。頑張れば頑張るほど報われるシステムになっているんですね。

給与は時給計算なので、時間どおり仕事が始まって時間通り終わる感じです。休憩時間は個人の時間だという意識が強くて、ある時私が休み時間に幼児教育の本を読んでいたら、同僚から今は休憩時間なのにどうしてそんなものを読んでるのかと言われました(笑)。中には休憩時間を利用してロッククライミングに行って、戻ってきてまた仕事をする人もいます。想像つかないかもしれませんが、すぐそこに山があるので(笑)。私が働いたことのある日本の保育園は、固定の月給制で残業代は出ず、休憩時間は事実上“掃除の時間”になっていたので大きな違いです。

仕事に対する評価ですが、私のデイケアでは毎月スタッフが交代で自分でテーマを決めてアクティビティーを任されます。どんなことをしたら子供たちが喜ぶか、子供の成長につながるか、クリエイティビティが試されます。これは私にとってとてもやりがいがあり自分をアピールできる場でもあります。一生懸命やっていると子供、親、同僚、ディレクターが評価してくれるので、モチベーションも上がります。

QLS: 日本からの留学生の中には保育士のプログラムをとって将来カナダで保育の仕事をしたいという方も多いですが、何かアドバイスはありますか。

後藤: やはりコミュニケーション能力を身につけるのが一番大切だと思います。子供に対してだけでなく、迎えに来た親に対しても一日あったことを話さなくてはならないので英語力は必須です。言葉の壁を感じたことはこれまで何度もありました。例えば、子供が少し暴力的だったことを親に伝えるのにストレートに言い過ぎて相手を傷つけてしまい、もっと気を使った言い回しがあったのにと後で反省したこともあります。でも言葉のハンデを過度に感じる必要はありません。私の保育園は約20人のスタッフのうち英語が母国語でないのは私を含め2名しかいませんが、それでも周囲は英語の上手、下手ではなくて、子供への接し方や仕事ぶりで評価してくれます。

それからカナダでの仕事探しですが、あまり特定の都市、地域にこだわらず柔軟に仕事があればどこにでも行くという姿勢で行った方がうまくいくと思います。私の時にはたまたまバンクーバーではなくアルバータ州の方にチャンスがあったわけで、その時々のタイミングでチャンスはどこにあるのかわからないものです。

QLS: 後藤さんとスカイプで初めて話した時に、自分のやりたいことがはっきりしていて芯の強い方だという印象を持ちましたが、数々の障害を乗り越えてカナダにまた戻ってこられたことを心より嬉しく思います。今後の更なるご活躍を応援しています。