迷走するカナダのビジネス移民プログラム

今月はカナダのビジネス移民プログラムの現状について取り上げます。

先日カナダ政府は、2013年に始まった企業家のための5年間のパイロットプロジェクト、“スタートアップビザ(SUV)”を恒久プログラムに移行する方針を発表した。現時点で累計117人の主申請者に永住権が発行され、そのうち68の新規ビジネスが立ち上がったという。しかしながら、会社設立後5年後には50%、10年後には30%しか残らないといわれるビジネス界の厳しい現実を考えると、年間平均25ケース程度のプログラムが本当に成功と言えるのか。

人気の旧投資移民プログラムが2014年に廃止された後に新設されたImmigrant Investor Venture Capital Pilot Program(10ミリオンドルの資産要件を満たし、その内2ミリオンドルを15年間、元本保証のない指定ファンドに投資するという馬鹿げたプログラム)は、案の定今年になって廃止された。

また、芸術、スポーツ、文化活動で世界レベルの活躍をしている人や当分野で自営業を営んでいる人を対象とした自営業者カテゴリーというものもあるが、最新のプロセスタイムが62か月になっているなど、どう考えてもこのプログラムで自営業者移民の受け入れを促進しようとしているとは思えない。以上のように、ビジネス移民プログラムの方向性はなかなか見えてこないのが現状だ。

スタートアップビザはプランより結果を重視すべき

SUVを申請するには、カナダの指定ベンチャー・キャピタル、エンジェル投資家、またはビジネス・インキュベーターの一団体からビジネスプランを評価され、ベンチャーキャピタルの場合は最低20万ドル、エンジェル投資家からは7万5千ドルもの投資の約束を取り付けることが必要だ。カナダ国外に居住し、カナダの市場について十分な知見もないであろう企業家が、こうした団体から契約、承認を取り付けるのは容易ではないだろう。革新的なアイディアを持つ企業家がビジネスを成功させ、カナダ人の雇用を作りだすことがこのプログラムの目的であることを考えると、申請資格を得るためのハードルを下げて、十分な資金と経営手腕が認められる場合は、すぐにワークパーミットを発行し、数年後にレビューを行い、実際に結果を出した申請者に対してのみ永住権を発給するというやり方のほうが理にかなっていると思われる。

お金で買える永住権の何が悪いのか

旧投資移民プログラムが廃止されたのは、申請者の大半を占める中国人ビジネスマンが永住権取得後はカナダに家族を住まわせ、本人は本国でビジネスを続け、非居住者であるためにカナダではほとんど税金を払わず、永住権取得後5年後には難民としてカナダで永住権を取得した人の納税額をも下回り、カナダの経済に全く貢献していないという理由からだった。元々このプログラムではカナダでビジネスをすることは期待されていなかったことを考えると、納税額でプログラムの成否を議論するのはフェアでないだろう。もし経済貢献を目的に掲げるのであれば、USのEB5のように投資したプロジェクトが創出した新規雇用者数によって永住権の発給が決まるようなプログラムにするか、もしくは、一生分の税金に相当する額を一括先払いすれば永住権が発行されるというような〝お金で買える永住権”と割り切ってはどうだろうか。

セルフエンプロイドにもチャンスを

現在エコノミッククラスの主流であるExpress Entryでは、カナダでの職歴はあくまで雇用関係にある就労経験しか認められていない。既にカナダで事業を行い税金も納め、カナダ人を雇用するほどになっている外国人が、カナダ人の元で雇用されていないという理由からプログラムから除外されてしまうのは納得がいかない。元々アーティストやアスリートなどはフルタイムでどこかに雇用されるという形態にはなじまない。まして、クラウドの普及により、米国でも既に労働市場の35%をフリーランサーが占めていると昨年10月にレポートされる中、カナダでも特定の組織に属さず個人の力で稼ぐフリーランサーが今後さらに増えてくるのは目に見ている。政府には、労働慣行の現状や変化をも考慮に入れ、時代を先取りしたプログラムを検討して欲しいものだ。