Dual Intent(デュアル・インテント)の合法性

今月は移民法の概念“デュアル・インテント”について取り上げます。

最近の移民法関連のニュースで気になったのは、ノバスコシア州のCape Bretonという田舎町を気に入って、その地へ移住を決意しカレッジ入学のための学生ビザを申請したドイツ人夫婦の話である。二人の娘を持つこの夫婦は既に家や車も購入し、福祉関係でジョブオファーも取得していたようだ。スキルアップのために学生ビザを申請したところ、“学生ビザ満期後にカナダを出国しないおそれがある”という理由で申請を却下されたという。

申請内容の詳細はわからないが、ドイツのような先進国出身者で、おそらくキャッシュで家や車を購入できるほどの資金力もあり、現地でジョブオファーも受けていた申請者が、どうしてカレッジ就学後に不法滞在する可能性があるという判断になるのだろうか。そもそも就学後もカナダに留まり、就労ビザでカナダで就労経験を積み、永住者となることを奨励しているのはカナダ政府の方である。さらに、人口減と高齢化が止まらないノバスコシア州を含むカナダ東部4州は、今年からパイロットプロジェクトを立ち上げて移民者数を増やそうと躍起になっているところである。

オフィサーは移民政策ではなく移民法に基づいて審査すると言われればそれまでだが、それでも却下の根拠を詳しく聞いてみたいものだ。

<デュアル・インテントとは>

移民法第22条2項は“許可された滞在期限を過ぎる前にカナダを出国すると認められる場合は、永住権保有者になる意思を持つことが、一時滞在者になることを妨げない”と規定している。つまり、永住権を既に申請していたり、永住権申請の意思を持っていても、それを根拠に一時滞在許可書の申請を却下できないことになっている。しかし、永住の意思を持ちながらも、滞在期限が到来したらカナダを出国するという一見矛盾するように見える二つの意思(デュアル・インテント)が、ともに真実であるということをオフィサーに証明することは容易ではない。

実際には申請者の保有資産や祖国での雇用機会、家族状況など複数のファクターで“許可された滞在期間を過ぎる前にカナダを出国するかどうか”が判断されることになっている。デュアル・インテントが法律上認められていても、最終的にはオフィサーの幅広い裁量に委ねられているため、判断にバイアスがかかるのは避けられないようにも思われる。事実、毎年多くのこの種のケースでオフィサーの決定に対する不服申し立ての訴訟が行われている。

<永住権申請の意思表明をすべきかどうか>

ファミリークラスのお客様から、“ビジターとしてカナダ入国の際に移民申請中であることを言うべきかどうか、”あるいは、“これから移民申請するつもりであると言っても大丈夫か、”という質問を受けることがある。永住者となる意思を示すことで直ちに入国拒否に合うことはない。但し、許可された滞在期限を過ぎる前にカナダを出国すると認められること、つまり、 不法滞在や滞在中の不法就労のおそれがないことをオフィサーに確信させることは必要である。

<移民申請中の出入国は大丈夫か>

移民申請中は国外に出ない方がいい、戻って来れなくなる可能性もあるという神話があるようだが、一部申請カテゴリーを除き、合法的な一時滞在ステータスがある限りは永住権申請中の出入国は通常は問題ない。問題になるとすれば永住権を申請していることではなく、過去の入国審査でレッドフラッグが立ってしまっていたり、一時滞在許可書に記載された条件を遵守しているかどうか疑われた場合になるだろう。

<コラテラル・ダメージ>

デュアル・インテントは、一時滞在しなければ永住権取得の申請要件を満たすことが難しいプログラムが存在する限り、当然許されておかしくない規定である。しかしながら、入国にビザが必要な発展途上国出身に違法滞在者が多い現実を前に、運悪く経験不足のオフィサーの判断に委ねられてしまう善意の犠牲者の数が決して少なくないことも忘れてはいけないだろう。