Parents, Play Smart! -必要のない苦労はさせない

 
日本社会には、年功序列とか、若者は苦労しなくちゃいけないとか、石の上にも3年とか、若者はとにかくつらい目にあわないといけないみたいな洗脳が昔からあったような気がする。これには賛成しかねる。苦労を全くする必要がないとは言わない。でも必要な苦労と必要のない苦労がちゃんと区別されていない。今でも、「最近の若者は…」などと言っているであれば、議論する余地なし。何の経験がなくてもポテンシャルを持った子供たちはたくさんいる。その子たちのポテンシャルに気づいて、必要のない苦労を避けて、必要なものだけを経験させて、できるだけ時間をかけずに育てることが、既に年をとってしまった人たちに与えられたタスクではないのか。

最近親子留学がトレンドになっていると聞いた。いいアイデアだと思う。大人が英語を身につけるには時間がかかりすぎる。英語には日本語人が聞き取れない音が多すぎること、そして言語習得は暗記で上手くなるものではないからだ。でも子供、とりわけ小学校2,3年生の子供なら、例えば、カナダの小学校で現地の子供と一緒に勉強すれば1カ月くらいで言葉を話し始める。もし経済的余裕があるのであれば、これは絶対に利用するべきだ。1か月で音の壁を越えられるなら留学費も無理する価値はあるはず。勿論、この能力を以後どうやってキープするかは親の力にかかっているのは言うまでもない。

ちなみに、誤解を避けるために、言っておきたいことがある。大昔、英語は白人の言語だとういうイメージがあったと思う。ところが、もうそんな時代は随分前に終わっている。少なくともカナダにはそんなイメージはかけらも残っていない。

カナダではアジアの発展途上国から、移民してきて、ここで生まれて育った子供たちの多くが、見事に成功している。成功のカギは極めて単純。カナダだけではなく、北米の白人の子供たちはあまり努力をしない。日本のように子供たちの多くが学校以外に塾に通って、厳しい受験戦争が存在するわけでもない。正直多くは怠慢でいい加減。でもそれが通用していた時期があった。でも今はその状況が一変している。東洋人の子供たちが、ここで生まれて、白人同様に英語を話せば、日本ほどではないにしても、勤勉に努力をする東洋人がトップに躍り出るのは当然のことだ。実際に、現在、トロントでNo.1の高校はスカーボローにあるほぼ100%東洋人が占める学校だ。

日本人も経済的な余裕さえあれば、同様のことが可能なはずだ。例えば、小学校の頃に子供をトロントに留学させて、音の壁を越えさせて、日本に戻ってしっかり中学まで終わらせる。高校からまたカナダに留学させる。例えば、トロントの東洋人だけのレベルの高い高校を選んで、留学させる。これなら結構スムーズに子供を国際人に育てられる。トロントのトップの東洋人が集まる高校なら、日本の子供たちも周りからちやほやされて悪い気分はしないはずだ。

日本にいてかなりの努力をして、例えば、東大に入ることができても、後から英語を身につけるのはどんなに優秀な人でも苦労するのは目に見えている。以前、森首相とクリントン大統領のジョークをインドでも聞かされたときは他人ごととは言え恥ずかしいと思ったのを思いだす。

子供を留学させるのに親として考えるポイントはいくつかあると思う。なぜカナダ、それもまたなぜトロントかということについてちょっと説明したい。親の立場として子供を海外留学させる時にまず第一に考えるのが、安全。これをクリアするところは正直アメリカを除いてオーストラリア、ニュージーランド、イギリス、シンガポール、カナダ、どこも似たりよったり。どこも日本レベルの安全性は期待できない。

これらの選択肢の中で、じゃなぜカナダ、しかもトロントかというと、やはり環境、地震がないのは言うまでもないが、例えばニューヨークもトロントと同じように様々な人種が共存している。でも彼らは相互に混ざり合わない。トロントはそこが本当に他の北米の都市と違う。例えば、友達を見るときに外見の属性が目に入ってこない、あくまで相手を人としてのみ認識する感覚は自慢できるはず。カナダ移民政策が成功している理由の一つはまさにここにあるような気がする。どんな理由による差別も許されない街。未だに白人が支配するアメリカのハリウッドのイメージはこの街にはもはや存在しない。

カナダの英語は世界的にみて非常にクリアで分かりやすい。英語を差別するつもりはない、標準語を子供に身につけさせたいのなら、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、アメリカは避けたい。ニューヨークはとりわけ訛りが強いのを知らない人が多いのには驚く。個人的にイギリスのアクセントはおしゃれな感じはするが、自分の子供の将来を考えた時に選択はしないだろう。カナダの英語なら、国際会議でも一番わかりやすい英語であることは保証できる。カナダはフランス語も公用語だから、もっといいと言いたいところだが、残念ながらカナダのフランス語は推奨できない。

トロントを初めて訪れる人の多くは外国に来た感じがしないはずだ。共存する人種の数が多すぎて、典型的なカナダ人の定義が不可能。Identity Crisis (アイデンティティクライシス:典型的なカナダ人あるいは文化の定義が不可能な状態)が指摘される所以はここにある。

逆に言えば、自分が自分らしく生きられる町。自分が自分のままでいることを受け入れてくれる社会。そんな世界がここには本当に存在している。

だから、ここを子供の教育に利用しない手はない。

懸念事項が2つある。

一つは、この20年間の間に乏しい食生活と怠惰なライフスタイルが肥満を深刻な社会問題にまで発展させてしまっている。留学中の子供の食生活をよくモニターする必要がある。

二つ目は、現状、発展途上国からの移民は自国を捨てて、自己の文化を失い、英語という偶然、現時点で国際言語になっている言葉に植民地化されながらも、自国にいたら得られなかった幸せをゲットして満足している。本人が幸せであれば、それでいいと思う反面、かわいそうにと思ってしまう。でもこれがカナダのありのままの姿なのだ。こんなことはつい最近まで世界第2位にあった経済大国日本に起こってはいけない。日本の文化は大切に次世代に継承してほしい。日本人としてのアイデンティティは決して失ってほしくない。

カナダを使って子供たちを苦労せずに国際人することは明らかに可能なのだ。でも日本人としてのアイデンティティを失わない努力が新たなチャレンジとして待ち構えている。

カテゴリー: English/Study abroad パーマリンク