Let’s face it! -悪いのは煙草会社じゃない

 
今週アメリカの連邦政府が喫煙者数の減少速度にかげりが見えていることを懸念して、年間5,400万ドルの予算をとって、喫煙反対を訴える、かなり攻撃的な広告キャンペーンを展開すると発表した。州政府レベルではカリフォルニアやニューヨークなど、多くの州で喫煙者を減らそうとするキャンペーンは今までにも行われている。ところが、よくメディアの話を聞いてみると、5,400万ドルという予算は、煙草会社が通常2日間のプロモキャンペーンにかける予算にも満たないということだ。

この話を聞きながら、ふと今週カナダでも煙草会社に対して270億ドルに及ぶ損害賠償金を求める史上最大の集団訴訟が始まったことを思い出した。約2百万人がこの訴訟に参加して、勝訴の場合は原告側の一人につき約一万ドルが煙草会社から支払われるという。

この集団訴訟は実はケベック州のモントリオールで行われている。個人的には、煙草がモントリオールの数少ない汚点の一つだと感じていたので、この集団訴訟について驚きはなかったものの、やはり、煙草会社に責任を追及する論理には幻滅した。

原告側の女性の一人がインタビューでこんなことを言っているのを聞いた。「私は1960年代に煙草を吸い始めたんだけど、あの時は煙草を吸うことがカッコイイことだって煙草会社がテレビコマーシャルなんかで言ってたからそのイメージにまんまと乗せられちゃったのよね。」

Imperial Tobaccoの広報を20年担当しているMichel Decoteauxさんが言うには、「現段階では、世間一般の人やメディアに対して、論理的なアプローチをしようとしても無理。彼らは煙草会社に煙草は有害なものだったと認めさせたいだけなのだ。」

この集団訴訟は13年かけてようやく始まって、これからまた判決が出るまでに何年もかかる。仮に何らかの判決が出たとしても、控訴するのは目に見えている。一体だれが漁夫の利を得ているのか。勝訴、敗訴に関係なく私腹を肥やすのは誰なのか。

世の中には煙草以外にも体に有害なものはたくさん売られている。例えば、アルコール、でも飲みすぎて、アル中になったからアルコールの製造会社を訴えるのか。チョコレートやアイスクリームを食べすぎて肥満になり、糖尿病になったらその製造会社を訴えるのか。

煙草会社が力ずくで無理やり誰かに煙草を吸わせたというのか。たとえ1960年代であっても、煙草が有害であることは誰もが少なからず知っていたはずだ。広告に踊らされて吸いはじめて、中毒になったからと言って、自己責任を煙草会社に責任転嫁しようとする論理が本当に妥当だと思っているだろうか。

正直、弁護士がお金がもらえると言ってケベックの貧しい喫煙者たちをそそのかしているとしか思えない。本当に罰せられるべきなのは原告でも、被告でもなく、彼らを利用して私腹を肥やそうとしている法律の専門家たちではないのか。

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