Ontario Brothels Legalized For Safety – 目的は売春婦の安全確保

 
オンタリオ州の上位裁判所(Supreme Courtではなく州の中では最高位にあるSuperior Court)が3月26日(月)、公に売春宿を経営することを合法化した。カナダではこれまでも売春行為自体は違法ではなく、売春宿を公に経営したり、客引きをしたりしてはいけないという規制があった。実際、この客引きをしてはいけないという部分は引き続き違法行為として規制される。勿論、この判決に対して60日以内であれば政府側からの上訴が可能。

政府側のスポークスマンが、この判決に対して“Harper首相が売春は社会の阻害要因であり、コミュニティー、女性、弱者に対して悪影響を及ぼすものだという見解を表明しているように…”という引用をして、上訴を検討中であることをほのめかしている。

これにはちょっとびっくり。同性愛者の結婚が認められるほど進んだカナダの首相でさえ、売春行為についてこんなコメントしかできないのであれば、今回の法制化に至るまでこれだけ時間がかかってしまったのも無理はない。

売春行為は合法なサービス業であるにもかかわらず、提供されるサービスの性質上、サービスを享受する側からの搾取行為が絶えない。実際、暴行や殺人に至るケースが少なくない。合法なサービスを提供する側の安全を確保するための法律が整備されるのは別に当然の話のように思う。正直先送りされすぎた法制化としか言いようがない。

今回の法改正によって、売春宿を公にオープンにすることが許可され、経営者側は警備員を雇うことによって、今後はサービスを購入する側からの搾取行為がしっかりと取り締まられることになる。

世の中には聞いた瞬間に不快感を覚える言葉や概念がたくさんある。だからと言ってそれが必然的に違法なわけではないはずだ。ここでも無意識のうちに洗脳されてしまった価値観が物事の本質を見ることを邪魔してしまう。

憲法で職業の選択の自由が保障されている中で、売春を職業とする人たちの労働環境が法律の力で保護されるべきなのは当然であり、議論の余地はない。

ところが、人々は、これを例えば「売春行為は猥褻行為だ。」とか、「売春宿がうちの近所にできたらどうしよう。」とか、「子供たちにあれは何って聞かれたらどうしようか。」とか、反射的で全く正当性を欠いた拒絶反応によって、合法なサービス業務自体を否定しようとする。これは売春行為の違法性を問う議論とは全く関係がない。

売春行為に関する問題は、サービスの内容自体ではなく、そのサービスの提供されるプロセスの中で、サービスを享受する側あるいは提供する側が契約の根底にある信頼関係を無視した行為に出ることによって生じている。

法律が規制するしないにかかわらず、売春が社会から消えるということは考えられない。売春以外にも存在を回避できない物は社会にはたくさんある。Gay marriage, Abortion, Challenged people, Pedophile, Euthanasia, Capital punishmentなど挙げたらきりがない。大切なのはそれらから目をそむけず、人権尊重の原理に沿って、それぞれをどうやって受け入れていくかが社会に課せられた課題と言える。今回の法改正はまさにその義務をしっかり果たしていると言わざるをえない。

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