China vs. US For Chen Guangcheng – 横顔しか見せない真実

 
先月中国の山東省で自宅軟禁状態にあった盲目の人権活動家、Chen Guangheng氏が北京のアメリカ大使館に保護を求めて逃げ込むというニュースが報道された。Chen 氏は、過去に「一人っ子政策」の一環として避妊や中絶を強要していると中国政府を告発して、4年間の投獄生活を強いられた。その後、2010年9月に出所して、以後、妻子と共に山東省の自宅で軟禁状態に置かれていた。

米中間の交渉の末、中国政府側がChen氏の安全を保障し、家族との面会も約束したことで、 Chen氏は中国国内に留まることを決意し、アメリカ大使館を出て、北京市内の病院に身柄を移された。

ところが他方で中国はアメリカが中国国内の問題に対して干渉していることに憤慨し、アメリカ側からの謝罪を強く求めているという。

一瞬、中国の独断的態度に、唖然、この場合、中国が人権を尊重した国であれば、謝罪を求める道理もある。ところが、これだけ明確に人権を無視している事実が世界に知られているのにもかかわらず、それを全く棚に上げて、Chen氏を助けようとしたアメリカに対して謝罪を求める神経が全く理解できない。

それにしても、こんな状況で、一体なぜChen氏が中国に留まるという選択肢が出てきたのか。

案の定、翌日のニュースで、Chen氏は、病院で妻と面会した後であらためてアメリカへの亡命を希望したという。理由は、彼の不在中、妻が拷問を受けたことを知らされ、中国にいては身の安全が確保できないと判断したためだという。

中国が理詰めで話の通る相手なら最初からChen氏が自宅軟禁状態を逃れてまで、わざわざ北京のアメリカ大使館に保護を求めて逃げ込んだりはしないはずだ。Chen氏は本当に不在中に彼の妻が拷問を受けることを予想しなかったのか。

大統領選のキャンペーンが激化するアメリカでは、この時すかさず共和党候補のMitt Romney議員がChen氏の保護に関する民主党の対応の甘さを厳しく批判した。

アメリカ民主党にとってみれば、アメリカの経済復興を支えるために米中関係をしっかり安定させることが最重要課題であることは言うまでもない。今回の事件が経済と安全保障を焦点とするはずの米中会談を控えていた矢先ことだっただけに、米国側の動揺は隠せなかったはず。一部のメディアがアメリカ側は米中関係が深刻な対立関係に発展するのを回避したと報道していた。本当にそうなのかと思ったその翌日にすべてが翻ってしまった。

中国で著名な盲目の人権活動家、Chen Guangheng氏、オバマが率いるアメリカ民主党、ロムニー率いるアメリカ共和党、国民を独裁的にコントロールする中国、ほんの一瞬まるで人権保護が最大の焦点のようにメディアが脚色する世界がある。でも本当にそうなのだろうか。

米国務長官が今回中国を訪れた目的はChen Guangheng氏を保護するためではなかったはずだ。今のアメリカの経済復興の鍵を握る米中関係を犠牲にしてまで、たった一人の中国の人権活動家を守ろうという意志が本当にアメリカにはあったのだろうか。あの状況で、もし保護しなかったら、国際社会のアメリカに対する評価はどうなっただろうか。

中国がChen Guangheng家族を保護するつもりがないニュースが流れると同時に、アメリカの共和党が民主党の対応の杜撰さを責めるコメントを流す。でもこれは別に人権保護を訴えるためでもなく、Chen Guangheng氏をサポートする意図でもない。ただ単に選挙戦を共和党に有利に進めたいという思惑があるにすぎない。

Chen Guangheng氏は、中国に留まっていては安全が確保されないと言い始める。中国の著名な人権活動家であるChen Guangheng氏がそんな単純なシナリオを予想できなかったとは思えない。米国務長官訪中スケジュールに合わせて、北京のアメリカ大使館に保護を求めて逃げ込んだ時点で、中国政府がその行為に対する報復手段として、彼の家族や親戚や友人に拷問を加える可能性があることくらい知っていたはずだ。彼の脱走を助けた人々も含め彼らの思惑の中に、Chen Guangheng氏がLiu Xiaoboに続いてノーベル平和賞受賞を狙う思いが全くないと言い切れるのだろうか。

外目には世の中に人権保護を訴えるように見えるこの事件、正直、犠牲者役を見事に演じるChen Guangcheng氏が米中関係を利用して漁夫の利を得ようとする姿にノーベル平和賞というよりはアカデミー賞主演男優賞でも授与したいぐらいだ。

例えば社会からマフィアが消えることがないのと同様に、世界の国レベルでの問題児も決して消えることはない。イラク、ロシア、シリア、北朝鮮と並んで、今後、どれだく多くのChen Guangcheng氏が現れたりしても、中国の人権を全く無視した独裁的冷酷さは永遠に変わるとは思えない。

世界的に正義の味方を演じるアメリカでさえ結局は政治的利害関係に操られているにすぎない。

間もなくGDPがアメリカを抜いて世界のトップに躍り出ようとする国がこんな状態にあって、一体どこで、誰が、どうやって人道主義を世界に伝えようというのか。

これでは、米中間の新たな冷たい戦争が語られるのも無理はない。

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