Gay Marriage? And? – 同性愛者はなぜあそこまで結婚を欲したのか?

 
11月に行われるアメリカ大統領選を前にオバマ現大統領がこれまで曖昧な立場をとってきた同性婚の賛否について、今月9日、過去の見解を翻して支持する意思を表明したことがニュースのトップにあがった。

実情はハリウッドからの政治資金調達が狙いのようだ。そう聞きながら、ふとカナダでも同性間の結婚を認めるか否かでドタバタ劇があった時期を思い出す。今さらアメリカでそんなことが大統領選に影響するのかと不思議に思う。

トロントのダウンタウンを歩いていて、単なる友達ではないのかなと思われる男性2人、あるいは女性2人が手をつないで歩いているのを見かけるのは珍しくない。これを珍しいと思って見ている人がいたら、間違いなく外国人観光客かどこか小さな街から来た田舎の人だということがすぐに分かってしまう。

1970年代にゲイプライドをスローガンに始まったゲイパレードも、正直なんで未だにこんなパレードをやるのだろうと思うことがある。差別されているのならともかく、この街では同性愛者に対する差別なんて存在しない。差別がないところにプライドを叫ぶ意味が本当にあるのか。

勿論、このパレードには約百万人が集まると言われ、世界各国からのこのパレードを見るために訪れる観光客がトロントに与える経済効果は無視できない。実際、同性愛者のカップルは大半が子供がいないせいもあって、俗に言うDINKS(Double Income, No Kids)に含まれる彼らは、自由に使えるお金が比較的多いことから、ビジネスでも様々な形でターゲットにされている。

カナダで同性愛者の権利が尊重されているのは世界的にも知られていて、同性愛者の結婚が認められていることはまさにそれを象徴していると言えるのだろう。カナダのファミリークラスの移民申請資格の中に、同性愛者のカップルが明確に含まれているのも差別を許さないカナダらしさが出ている。

勿論、同性愛者に限らず、差別なく、誰もが平等の権利を与えられるのは当然の話だ。

しかしながら、同性愛者が真剣に異性愛者と同様に結婚式をあげたいとか、世間に自分たちの愛を認めてもらいたいというような、極端に結婚を美化した話をされると、一体いつの時代の話をしているのかと疑問に思う。

同性愛者のカップルがパートナーの年金や遺産の相続権や所得税の控除を、異性愛者のカップルと同様に認められるように求める論理はもっともだと理解できる。実際、同性愛者の結婚が認められる以前に、これらの権利は既に認められていたはずだ。

不思議なのは、なぜ、同性愛者があそこまで結婚を欲したのかだ。北米では現在結婚をしている人口が50%以下になっている。また、実際には約50%の結婚が離婚に終わっているわけで、異性愛者の多くは、この現状を無視したりはしない。別に異性愛者のシングルの割合が増えているわけではない。結婚という形を取らずに一緒に時間を過ごしているカップルの数が増えているのだ。

社会が急速に進化していく中で、複数の人間を結ぶ関係も同様に進化している。一緒に時間を過ごしたいという2人の関係は既に様々な形に多様化してしまっている。それらを全て結婚という古ぼけた概念で定義しようすれば、結婚が離婚に終わってしまうのも無理はないはずだ。

つまり、結婚という概念自体が事実上意味を失い始めている。社会が、結婚しなくても子供を産み家族をつくることができる場として機能し始めている中で、本当に同性愛者は結婚を欲したのか。もしかしたら、ただ単に、「周りがみんな持っている権利だから、自分が持てないのは不公平」、あるいは、「同性愛者の存在自体を軽蔑する人達にこれが差別であることを公に認めさせたい」、こんな理由で結婚を求めたのだろうか。

子孫繁栄、結婚に関連したビジネスがもたらす経済効果、結婚とういう概念が存続しなければならない理由が全くないわけではないのは理解できる。しかし、政治的にも、結婚とういう概念は現実とは全くかけ離れたイメージで語られ、それに踊らされる人も後を絶たない。結婚は宗教化しているだけでなく、宗教以上に宗教的な力を持っていると言っても過言ではない。その上、信仰者の多くは、実際に50%は失敗するという現実にも、自分だけは違うと真剣に信じ込んでしまう。こんなに怖い宗教が他にあるのか。

カナダの同性愛者が結婚を勝ち取ったことで、将来的に予想される経済効果は大きく、社会においても、いかなる差別も許してはいけないという象徴として重大な意味があったことは確かに認める。

しかしながら、結婚という概念が現状にそぐわない中で、あのドタバタ劇をやってまで勝ち取った物の中身の古さを、同性愛者の人たちは本当に認識しているのだろうか。

差別されたくないという思いに取りつかれて、自分たちにとって本当に大事な物が何なのか忘れないで欲しい。

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