Illegal immigrants line up for Reprieve - 違法行為が違法でなくなる時

 
今年の11月に迫っているアメリカ大統領選での再選に向けて、6月15日に米国在住のラテンアメリカ人コミュニティーからの票取りを狙って、オバマ現大統領が打ち出した不法移民救済プログラム。このプログラムによって不法移民は国外追放までに2年間の猶予を与えられ、その期間中に仕事を見つけられれば合法的に就労可能となる。

申請条件は:

1.6月15日時点で、米在住中で31歳未満、かつ初めてアメリカに住み始めたのが16歳未満からで、少なくとも5年間継続してアメリカに在住していること。

2.現在学校に通っている、または、高校を卒業している、または、軍隊からの兵役義務を果たし正式に除隊していること。(何で軍隊に行けるのか??)

いつまでに申請しなければならないという期日はなく、申請料金465ドルを払えば申請可能。却下された場合控訴はできないが再申請することは許される。勿論、犯罪歴がある場合は申請が却下される可能性もある。

Migration Policy Instituteからの報告によれば、現時点で申請資格がある不法移民の数が約120万人、そして間もなく5年を迎えて申請資格を得る子供達が50万人と予想される。そしてそのうち46万人がカリフォルニア州に集中しているという。

案の定、今週の初めにロサンゼルスのプロボノグループ、Coalition for Humane Immigrant Rights of Los Angelesの事務所にこのプログラムに申請するためのアドバイスを求める不法移民の大行列ができたというニュースが報道された。

このディールの落とし穴は一体何なのだろうと思って読んでいると、このプログラムは不法移民に対して永住権を与えるわけでもなく、市民権への道を開いているわけでもない。2年後と言えば、オバマ大統領が再選されているか否かによってその後の取り扱いが変わってくる。まさにそれを見込んだオバマ大統領の再選を狙った票取り選挙戦略。

レーガン大統領が昔似たようなことをやったらしい。ただ1986年の移民救済政策では4年以上アメリカに滞在していた農業に携わる季節労働者には永住権を与えたようだ。

このアメリカの不法移民の問題は言うまでもなく、今に始まった問題ではない。実際に、アメリカ国民の中には不法移民に就労の権利を与えたり、市民権取得への道を開くべきだと考える人も少なくないという。勿論、約3割の国民が不法移民は自国に帰るべきだと考えているのも否めない現実だ。

陸続きの中南米から不法入国、不法滞在を阻止するシステムを確立するなどと言うこと自体今となっては全く実現性を欠いた話だ。だからと言ってこのままパッチワーク的な政策で問題を先送りにしてはいけないことぐらい多分アメリカ政府も十分承知しているはずだ。

不法移民の流入をせき止められなかった後禍は永遠に続くガンの末期症状のように今アメリカに押し迫っている。

それにかかわらず、見ないふりをして、時に自分の利益のために利用しようとする政治家の偽善的行為には唖然として言葉を失う。

過去3年間にオバマ政権が国外追放した不法移民の数は120万人にも達するという。

それでも大統領選が近づくと手のひらを返したようにこんな自分勝手な政策を打ち出すのか。

自らの生活を何世代にもわたって既に確立している不法移民の数は、もう国外追放では解決できない数に及んでいる。始まりがどんなに違法でも、それを放置した行為がその違法性の時効に及んでしまった時、もうそれを違法行為と呼んでも何の解決にもならない。

国中に根を張ってしまった不法移民に頼らざるを得ないアメリカはその解決方法を見つけられないまま、大統領選のたびに思い出したように不法移民の人生をもてあそぶ。

外国人が犯した違法行為を、政治的理由から時に有罪としたり、無罪としたりする行為が本当に許されていいものだろうか。

今まで陰に隠れていた若者たちが、メディからのインタビューに答えて、この救済プログラムが自分達に翼をくれたと歓喜する。

たとえ違法で始まったとしても、純粋に将来に夢を描く若者たちの運命をもてあそぶ権利がアメリカ政府上層部には本当に与えられているのか。

根本的な問題を先送りにすればするほど回避できない後禍はやがて誰の手にも負えなくなってしまうことをアメリカのトップはしっかり認識しているはずなのに。

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