Eating Disorders -肥満対策に一言

 
今週は未だに犯人が捕まっていないトロントで起こったバラバラ殺人事件に始まって、シリアで日本人のレポーターが乱射事件の犠牲者になるなど気がめいる悲惨なニュースを毎日のように聞かされたせいか、朝、事務所に向かう車の中でラジオから流れてきたたわいのないニュースにほっとした。

ラジオ局に電話をかけてきた女性が、いきなり、何の脈絡もなく、洋服の値段はサイズによって変わるべきだと主張する。大きいサイズの人は洋服の生地をたくさん使うのだから高くなって当然なのだという。局のスタッフが唖然としているのが分かる中で、彼女が言っていることもあながち間違っていないと思い1人大笑いをした。

そこでまた今週のニューヨークタイムズの中でBinge Eating(過食症:過食して排出しない) に悩む男性の数が増えているという記事が目に止まった。そういえば、随分昔に、一般的には10代から20代の女性にありがちなAnorexia:拒食症やBulimia(過食症:過食して全て排出する) が40代、50代の女性に広がっていることを伝えるニュースを思い出す。

現在北米ではAnorexiaとBulimiaに悩む患者の10パーセントが男性、単なるBinge Eatingは性別による差はないという。The International Journal of Eating Disordersの3月号に掲載されたオンラインアンケートの結果によれば、アンケートに答えた年齢18-65歳の46,351人のうち女性の11%、そして男性の7.5パーセントがBinge Eatingの症状を認めているという。

アメリカにはBinge Eating Disorder Associationという団体が既に存在している。この団体のトップのコメントによれば、男性はなかなか相談に来ないことに問題があるというが、一方、Binge Eatingに悩む男性の患者の1人は、「ダイエットは一般的に女性の問題とされていて、実際Binge Eatingで専門家の助けを求めようとしても男性を対象としたものが全く見当たらなかった。」という。

男性がこのBinge Eatingに陥る典型的なプロセスは、肥満による自尊心の低下が職場でのパフォーマンスに悪影響を与え、それがストレスに繋がり、そのストレス解消にさらに過食行為に走ってしまうというもの。

肥満はカナダでもアメリカ同様に大きな社会問題の一つになっているのは言うまでもない。肥満は万病のもと。肥満の数が今後も増え続ければ、将来的に国が負担しなければならない医療費に多大な影響を与えることは避けられない。

どうしてもっとプロアクティブな政策を政府がとらないのかいつも疑問に思っている。

カナダ人がよく言う、”He is nice.” “She is nice.”が象徴する互いに優しすぎる、悪く言えば怠け気者的文化が、この肥満の問題の解決を邪魔しているように思えてならない。大体、町のあちらこちらで見かける肥満のほとんどが自分を肥満だと思っていないのも恐ろしい現実。

肥満は突然起こるわけではない。毎日自分の体の形がどう変わっていくかは本人が一番よくわかっているはずだ。

ファミリードクターも毎年一回の健康診断の時点で患者が肥満になりかけているかどうかは一目見ればわかるはずだ。

例えば、肥満を麻薬中毒と同様にとらえて、初期の段階でリハビリに送るとか、あるいは適切なリハビリを受けずにほっておいた場合は罰金を科すぐらいのことを政府は考えるべきではないのか。

肥満はほっとおいてもすぐには問題にならない。まして、周りが皆肥満になると「自分はあの人ほどひどくないから。」と勝手に安心する。

そう言えば昔、カナダ人の友人にミルクは一番の太る原因だと言われた時には目が点になった。日本のミルクに対する理解とは対照的に脂肪分が2%でも太ると大騒ぎをする文化がここにはしっかりと存在する。しかし、ミルクも、チョコレートも、ケーキも、ステーキも別に太る直接的な原因ではないはずだ。原因はあくまでも食べ過ぎにある。こんなに因果関係が明確な問題の答えに、相変わらずもっともらしい言い訳を探そうとするのにはあきれる。

今まで多分先天的にある人種は太りやすい体質にあると気の毒に思ったこともあったが、そんな言い訳が通らないレベルにまで達している。

どんなにワークアウトを推奨しても、ジムで、街中で、必死にジョギングをする人たちのほとんどが既に痩せていてその必要がないと思われる人たちばかりだ。どんなにスローガンを掲げてもこの肥満の問題が解決するとは思えない。

現状、肥満を深刻な社会問題として取り上げた報道でさえ、なぜか、「肥満はテレビを見ているあなただけではないからそんなに気を落とすことはない。」と真剣味が感じられない。

政府には肥満に関してただ単に現状の深刻さを優しく伝えるだけでなく、もっと抜本的な対策案を打ち出してほしい。

そして、長期的には、医者不足を問題にする前に、国民の大多数が健康で、あまり医療を必要としない社会づくりを目指すべきだと思う。

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