Strip for tuition fees? -裏目に出る移民政策

 
先月の初めにカナダ連邦政府はセックス産業に関連したビジネスで就労しようとする外国人に対して今後HRSDC(Human Resources and Skills Development Canada)はPositive LMO(Labor Market Opinion)を発行しないと発表した。

7月14日には更にCIC(Citizenship and Immigration Canada)は今後セックス産業で就労しようとする外国人の就労ビザ申請を受け付けないことを発表した。

要はもうセックス産業では外国人は働けないというメッセージ。

でも一体突然なぜ?

もともと外国人でなければできない職種ではないだけに、それが今まで許されていたのも変な話だと思う反面その理由が気になった。

すると、セックス産業で就労する外国人は搾取や虐待を受ける危険にさらされているというような、よく詳細がつかめない理由が挙げられ、挙句にはこの新ルールには人身売買を撲滅する意図があるという。

合法的に働く外国人が搾取や虐待を受ける危険にさらされている状況を改善するために就労ビザを発行しないことが解決方法なのか。売春婦の保護のために売春宿を合法化したのだってつい最近のことだ。

セックス産業に関する限り、公序良俗概念との照らし合わせで公共の利益と労働者側の利益のバランスを見ながら、できるだけ従来までは違法とされていた概念を合法化していくことで労働者側の保護を図るというのが進歩的な国カナダの見解なのかと思っていた。

つまり、違法就労している外国人が搾取や虐待を受けやすいという話ならすぐに理解できるが、合法的に働いて法律上カナダ国内で保護されている外国人が搾取や虐待の危険にさらされているのであれば、外国人労働者だけでなく、セックス産業で就労しているカナダ人だって同様の危険にさらされていることになるはずだ。

もしそうなら、ビザを発行するとかしないとかの話ではないはずだ。セックス産業の労働環境を改善する必要があるという問題ではないのか。

ヌードダンサーとしてカナダで就労する外国人は、ワーキングホリデービザで楽しく英語を勉強しながら海外での長期滞在をエンジョイするのとはわけが違う。おそらく生活をかけて働いている外国人がほとんどなはずだ。ビザを発行しなければ、就労ビザを持たないセックス産業で働く外国人がすんなりカナダから出て行くとでも思っているのだろうか。こんな政策ではただ単に違法滞在者の数を増加させて、違法労働者に対する搾取や虐待をさらに悪化させるだけではないのか。

大体、ビザを発行しないという政策は見方を変えれば典型的な責任回避としか言いようがない。難民政策とは違い国際コミュニティーからの批判が出ないのをいいことに、臭いものにはふたをして、国外退去させてしまおうとする安易な解決方法。こんな短絡的で手抜き政策のつけが回ってこないはずがない。

正直、この新ルールの説明は全く理解できない。セックス産業で働く外国人を全く無視しているか、あるいは、何か全く違う理由が隠れているとしか考えられない。

そして、案の定、先週、ダンサー不足に悩むウインザーにあるストリップクラブがカナダ人の大学生を対象に学費援助を謳い文句にしてリクルートを始めたというニュースが報道された。

実際にトロントから既に学費目当てにダンサーなりたいという学生が応募し始めているという。

インタビューに答えるある大学生が、ほほ笑みながら、「それはいい考えだ。私もやろうかな。だって今もう文無しだから。」と話す。

この予想外のシナリオをカナダ連邦政府は一体どう受けて止めているのだろうか。

明らかに政府の政策が裏目にでている。移民省大臣、これから一体どうするつもりなのか。

この世の中にセックス産業を必要としない社会は存在しない。逆に言えば、どんなに多くの人が批判の声をあげて反対しても、社会はどうしようもなくこのセックス産業が必要なのだ。つまり、必ず誰かがこの産業の中で働くことになる。

メディアからのインタビューにある女性が「私は絶対にお金のためにそんなことをしない。」と職業自体を軽蔑するトーンで吐き捨てるように答える。おそらく視聴者の女性の多くが同様に感じているのだろうか。

でも、もしそうなら、人間が人間として正常に機能するために、社会がどうしても必要とするこのセックス産業で働く誰かは本当に軽蔑されるしかないのか。社会からこんなにも必要とされながら、言い返すこともできず、正当な理由もなく、ただひたすら軽蔑されるしかないのか。

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