When chips are down, just hang in there… -人生はそんな簡単に完結しない


20代、30代に幸福を絵にかいたような人達が、10年たって、20年たって状況が一変してしまう話は本当に珍しくない。勿論、その逆についても同様のことが言える。

おそらく、誰もが忘れがちなのが偶然の重なりがつくりだす幸福感や絶望感の意味。

俗に言う偶然のいたずらは、時に人に必要のない精神的ダメージを与えてしまう。

ふとある女性の話を思い出す。つい最近夫を交通事故で失って立ち直ろうとする。皮肉にも彼女自身が40代のセラピスト。実は彼女は息子をまもなく出産しようとしていた時に、流産して精神的に不安定な状態に陥った元患者に誘拐され、麻酔で眠らされて、殺されかけている。結果的には間一髪で命を救われ、子供も無事に出産したものの、結婚生活は短いハネムーンの時期を過ぎた後は喧嘩が絶えない状況が最後まで続いていた。そして夫を事故で失った今、周りの友達が、皆幸福の絶頂にあるように見える偶然の一瞬にとらわれて、自分の人生は既に終わってしまったと落ち込んでいる。

状況は千差万別であっても、年齢に関係なく、誰もが人生の中で他人と比べて幸福だと感じたり、あるいは不幸だと感じたりする瞬間を通り過ぎる。例えば、失恋して、あるいは仕事を失って、不治の病に襲われて、不測の不運に巻き込まれて立ちすくんでしまう瞬間がある。

残念ながら、どんな社会でもメンバー全員が生まれてから死ぬまで幸福であるというのは理想であって、現実にはそんな社会は存在しない。

そして、この40代の女性、もう新たな出会いもなく、息子と二人暮らしの人生、息子がやがて自分の家庭を築く時には一人取り残されて淋しい余生を送ると落ち込んでしまっている彼女に一体何が言えるのか真剣に考える。

同情でもなく、ありきたりな慰めでもなく、ひとつだけどうしても言ってあげたいことは、「人生はそんなに簡単に完結したりしない。」ということ。

典型とか、コンベンショナルな概念は人間の人生を一般化することには長けていても、個々の人生の数奇なめぐり合わせまで一般化することはできない。

この女性は4年前まで一生結婚はしないと思っていたにも関わらず、しかも絶対に子供はつくらないと周りの友人達に宣言していたにも関わらず、2年前に結婚して息子が生まれた。もし4年前に彼女に対して、2年後にあなたは結婚して子供ができると言ったら、「はあー?」と答えていただろう。しかし実際には、2年前の幸福の絶頂時に2年後あなたは未亡人になると告げたら、信じるはずがなかっただろう彼女が、まぎれもなくここにいる

つまり、人は不幸の瞬間にはなぜか、過ぎてしまった、そしてやがてまたやってくるかもしれない新たな幸福の瞬間から目をそむけてしまい、正常なマインドが機能しなくなってしまう。

彼女にこの先幸福が約束されているなんて決して言えない。でも、年齢が幾つになっても、どんなに周りが幸せに見えても、どんなに周りが羨ましく思えても、年齢が人生を完結したりはしないことを本当に理解して生きてほしい。

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