Offshore secrets of the rich exposed…-聖域に隠れた富裕層が狙われる時


政治家や弁護士が欲に目がくらんで、オフショアアカウントを利用して脱税行為に走るニュースが流れる。フランスでbudget minister, Jérôme Cahuzac、カナダで集団訴訟の専門弁護士Tony Merchantがやり玉にあがる。

世界中のあちこちで汚職が語られる中、こんな脱税のニュースを聞かされても誰もが”What else is new?”と呟いて終わってしまう今日この頃。

まさか政治家や弁護士がプレスコンファレンスを開いて、「魔が差して脱税した」と発表するはずもないと思った瞬間、メディアがここぞとばかりに爆弾を投下する。

CBCやニューヨークタイムズを通してThe International Consortium of Investigative JournalistsがThe Guardian, Asahi Shinbun, Le Monde, The Washington Postを含む世界のメジャーメディアと協力してオフショアアカウントを使った富裕層の脱税行為の証拠を入手したというニュースが流れる。その規模は過去最大!!!

ええー?

勿論、富裕層がオフショアアカウントを使って脱税行為に走るのは今に始まったことではない。

一体なぜメディアが団結してこんな行動に出たのか。妙に気になってニュースに聞き入る。

報道によれば、今回のリークは主にthe British Virgin Islands, the Cook Islands そして Singaporeをカバーする 250万にも及ぶ富裕層の脱税行為を証明する財務情報ファイル。その中には12万社に及ぶ企業や世界の170カ国の富裕層を含む約13万の個人やエージェントの非公開財務情報が含まれていたという。

報道の中で公開された著名人の中には、Jean-Jacques Augier(2012年のフランス大統領選で、現フランソワオランド大統領のco-treasurer務めた人物) 、Olga Shuvalova(ロシア副総理夫人)、Maria Imelda Marcos(故マルコス大統領の娘)の名前が挙がっていた。

世間一般から高給取りと言われている一部上場企業の管理職にある人達や俗に言う高級官僚でさえ、想像もつかないような超現実的な数字が次々と耳に入ってくる。

報道されたあまりにも現実からかけ離れた数字に、超富裕層と言う意味を改めて認識させられる。

報道内容の中で、McKinseyコンサルティンググループの元チーフエコノミストからのコメントが引用されていた。富裕層の中にはUS$32兆ドル(約2,880兆円)相当をオフショアアカウントに隠しこんでいた個人が存在したという。

32兆ドル??? 本当に個人資産の話をしているのか?

政治家が貧富の差をなくそうとしているようなふりをして、弁護士は正義を追及するようなふりをして、権力を手にした人達は陰で財力を増やすことに夢中になっている。

そして2013年4月現在、世界のあちこちで経済危機が語られる。

“Don’t be so naïve!” と自分に言い聞かせながらも、このニュースには正直驚きを隠せなかった。

トロントの街角で小銭を乞うホームレスの姿が視界に入ってきた瞬間に、なぜかこの32兆ドルと言うあまりにも現実離れした数字を思いだして妙に不快な気分になった。

世界が、社会が、法によって人々が時に倫理観を失った行動に出ることを牽制しようとしても、財力をベースに権力を手にした人々が法の手が届かない聖域に逃げ込もうとする流れを止めることはできない。

振り返ると、自由競争の原理に基づく社会がスタートした時点で、今の事態が必然的にやってくることをどうして分からなかったと言えるのだろうか。

人間は能力的に決して平等に生まれてこない。どんなに人々が平等を唱えても、先天的な能力差を100%埋め合わせる機能を現行社会の仕組みは有していない。

例えば、100人の人間で構成される社会があったとする、その100人について財力を築く能力を比較したら、たとえ、人生が往々にして運、不運に左右される事実を考慮したとしても、1番と100番の違いは既にスタート時点で明確に存在する。

それが10年後、50年後、100年後、リセットできないほど大きな貧富の差になることをどうして予想できなかったと言えるのだろうか。こんな単純な原理を理解するのに、経済学者である必要はないはずだ。

貧富の差がどうしようもないレベルに達する前に、人々は政治家がその貧富の差をなんとかアジャストしてくれると信じている一方で、インターネットが見せる世界事情のスナップショットは、経済危機が悪化すればするほど自己の利益を守ろうとする政治家を含む権力者たちの姿を映し出す。

明らかに、従来正しいと信じられていた社会の仕組み自体が機能していない。

富裕層のオフショアアカウントを利用した脱税行為を幇助した金融機関があって、なぜかその行為を法が取り締まることができていない事実。

社会を構成するおそらく90%以上の人間が、表面化しなければこの脱税行為の違法性に関心も持っていない事実。

経済危機が世界レベルでここまで悪化しなければ、メディアも今回のような行動に出なかったのだろうと思える事実。

ここで富裕層の脱税行為を弁護するつもりは毛頭ない。ただ、脱税の誘惑に負けた富裕層心理をどんなに責めても根本的な解決にはつながらない。

いずれにしても、おそらく、メディアが示唆するように、現時点まで救いの手を差し伸べようともしない世界中の超富裕層の力で、今の経済危機を救えるという暗示には120%同意せざるを得ない。

しかしながら、仮に富裕層の助けによって今の経済危機から脱却できたとしても、救われた後の社会の仕組みが人間の先天的な能力差を考慮して改善されない限り、経済危機はまた必ずやってくることを忘れてはいけない。

この問題を根本的に解決できない限り、富裕層はこれからも新たな聖域で財を成し続け、貧困に苦しむ人達はまたさらに貧しくなっていくにちがいない。

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