If Canada doesn’t help you, Québec will! -注目されるべきケベック移民政策


先週、ようやく5月から受付を再開するカナダ連邦スキルワーカークラス新基準の詳細が発表になった。これを読むとスキルワーカーに関する限り、基本的に仕事のオファーがない場合、移民省指定の24職種に属さない人はカナダ永住権取得への道が断たれたというように一瞬見えてしまう。

この報道を読みながら、ふと何年か前に会った日本人女性の話を思い出す。

日本の大学でPhD(博士号)をまもなく取得する過程にあって、リサーチ目的でカナダを訪れていた彼女。社会や、家族や、俗に言う世間体からのプレッシャーをあまり感じることがない環境に置かれていた彼女が、ため息をつくように言い放った一言。「もう日本には帰りたくない。」

カナダでは彼女が博士号をとるために勉強していることを周りの友達は皆、羨ましく思っている。能力に恵まれて研究に没頭する人間のひた向きな姿が讃えられるのは当然なのにもかかわらず、日本に帰ると近所の人達から「あそこの娘さん、30過ぎてまだ結婚もせずに、大学院で博士号の勉強してるんだって…」と、変わり者扱いされるというのだ。

あまりにも馬鹿げた状況にコメントもできなかった瞬間。

人間が他人の意見や時代遅れの価値観に惑わされずに正直に自己が欲することを追及している姿を見て、どうしてそんな評価が出てくるのか。勿論、彼女は予定通り日本に帰った。

どうやっても変わらない社会、そして、それ以上に立ち止まったままの人の心が、目に見えない大きな壁を社会に創り出しているのだろうか。

ふとケベック州が打ち出しているユニークな移民プログラムについて思い出す。

連邦政府が掲げるエコノミッククラスの移民申請要件の中には、カナダで生まれ育った人々の多くでさえ満たすことのできない条件が数多く含まれている一方で、同じ国でありながらフランス語圏が持つ、社会のバランスを第一に考慮したとも思われる独自の移民政策にはひどく興味をひかれる。

移民の国カナダで、英語が上手く話せないフランス語圏の人達は、社会の現状を連邦政府よりもより現実的な立場でとらえている気がする。

社会は高学歴でハイプロファイルな職業についている人達だけで構成されているわけではない。学歴では測れない人間の能力を上手く社会に反映させようとする移民政策。ようやく自分らしく生きることの意味を理解する20代後半から30代半ばぐらいの時点で、キャリアを180度転換して自分らしく生きられる土地で新たな生活を始めることを欲する人達に対して、ケベック州は現実味のあるソルーションを提供している。

言うまでもなく、ケベック州の移民プログラムでケベック州に移民することは基本的には連邦政府の移民プログラムで移民することと何ら変わりはない。ケベック州に移民した後に、他の州でいい仕事が見つかったらそこに移っても勿論全く問題はない。

ところが、ケベック州がフランス語圏であるため、例えば、連邦政府から公認を受けている移民コンサルタントでさえ、フランス語ができなければケベック州に移民を希望するクライアントの申請代行業務を行う資格が与えられない。つまり、ケベック州が提供しているユニークな移民プログラムのプロモーターがなかなか増えない現状がある。公用語でありながらフランス語と言うだけで、ケベック州以外の英語圏に住むカナダ人の多くが食わず嫌い的に近寄ろうともしないケベック。言葉の違いが生み出だすカナダとケベック州の距離を越えられないまま、ケベック州の移民プログラムは連邦政府の陰にすっかり隠れてしまっている。

もし本当にカナダで生活する選択肢を十分な学歴や職歴がない、カナダの雇用主が見つからないという理由だけで諦めている人がいるとしたら、ケベック州のプログラムは検討する価値があることを強調しておきたい。

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