タグ別アーカイブ: カナダ市民権

市民権法改正について

 
2017年6月19日にカナダ市民権法の改正案(Bill C-6) が施行される見通しとなりました。市民権申請のためにカナダに物理的に居なくてはいけない期間の6年のうち4年が、5年のうち3年に軽減され、永住権取得前の一時滞在者としての滞在期間も半日分をカウントできるなど、全体的には申請要件が緩和されています。改正内容とその施行時期は以下の通りです。
改正前の市民権法 改正後の市民権法
2017年6月19日より施行
国家に対する反逆、スパイ、テロによる有罪判決を受けたり、カナダと紛争関係にある国や組織の武力に加担した二重国籍者の市民権を取り消すことができる。 本条項は廃止。これらの犯罪で有罪判決を受けたカナダに居住する二重国籍者は、法律違反を犯した他のカナダ市民同様にカナダの司法制度によって裁かれる。
市民権授与にあたり、申請者はカナダに居住し続ける意思を示すことが必要。 本条項は廃止。市民権授与にあたり、もはやカナダに居住し続ける意思を示す必要はない。仕事や個人的理由でカナダ国外に居住することが必要なカナダ市民に対してフレキシビリティーが与えられる。
市民権法第5条(1)の特定要件を大臣の裁量によって免除することができ、カナダ人の親のいない未成年者も市民権を得ることができる。 市民権法第5条(1)において市民権取得のための年齢要件が撤廃され、カナダ人の親のいない未成年者も市民権を申請できる。
社会奉仕活動を通じて刑を執行中の個人に対する市民権授与、市民権宣誓、市民権の要件であるカナダに物理的に居なければならない日数の計算に関する条項はない。 社会奉仕活動を通じて刑を執行中の個人は、市民権を授与されず、市民権の宣誓ができず、市民権の要件であるカナダに物理的に居なければならない日数の計算にこの期間を含めることができない。
大臣は特殊で尋常でない苦難を軽減するため、あるいは、カナダに並外れた価値をもたらす奉仕に報いるために一個人に市民権を授与する裁量権を持つ。 無国籍であることを唯一の理由として、市民権授与を考慮すことのできる裁量権が新たに追加される。
市民権省は、市民権申請者のニーズに適応するために妥当な対策をとっているが、障害者への対応について市民権法の中で明確な言及はない。 市民権申請者が障害者の場合には、そのニーズに適応するための妥当な対策を考慮しなければならないという要件が市民権法に含まれることになった。
申請者は市民権申請時から市民権宣誓までの間、市民権取得要件を維持しなくてはならないという要件は、2015年6月11日以降に受理された申請にのみ適用される。 本要件は、2015年6月11日以前に受理された申請書を含む全ての申請に適用される。
2017年の秋から施行
申請者は市民権申請前の6年のうち4年、カナダに物理的に居なくてはならない。 申請者は市民権申請前の5年のうち3年、カナダに物理的に居なくはならない。
申請者は物理的に居なくてはいけない6年のうち4年について、所得税法が適用される場合は、所得税を申告していなければならない。 申請者は物理的に居なくてはいけない5年のうち3年について、所得税法が適用される場合は、所得税を申告していなければならない。
申請者は市民権申請前の6年うち4年は、各年183日以上カナダに物理的に居なくてはならない。 本条項は廃止。
永住権保有者となる前のカナダ滞在期間は、市民権取得のためにカナダに物理的に居なくてはならない日数の計算に含まれない。 申請者は永住権保有者となる前に一時滞在者としてカナダに滞在した日数を半日として、最大365日までカナダ市民権取得のためにカナダに物理的に居なくてはならない日数の計算に含めることができる。
14歳から64歳までの申請者は、市民権取得のための言語・知識要件を満たさなくてはならない。 18歳から54歳までの申請者は、市民権取得のための言語・知識要件を満たさなくてはならない。
2018年の初め頃に施行予定
大臣は虚偽申請、詐欺、重要な事情の意図的な隠蔽を理由とする市民権取り消しの大半のケースを決定し、連邦裁判所はそのうち安全、人権または国際法上の権利侵害、及び組織犯罪が関わるものを決定する。 個人が大臣による決定を要求しない限り、連邦裁判所が全ての市民権取り消しの決定者となる。
市民権オフィサーに虚偽または虚偽の疑いのある書類を押収する権限について市民権法において不明確。 市民権オフィサーに虚偽または虚偽の疑いのある書類を押収する権限が市民権法に明記される。

脱・便利な市民権、厳しくなった取得要件

今月は最近改正された市民権法改正のポイントについてご説明します。

2015年6月11日付で、昨年夏から段階的に行われていた市民権法改正の全条項が施行されることになった。振り返れば2006年のレバノン侵攻の際に、カナダに居住していないカナダ国籍者救出のために多額の国民の税金が使われたと報じられた頃から、市民権法改正の議論が活発になったと記憶している。そして、数年前に虚偽申請によって多数のカナダ非居住者がカナダ市民権を取得していたことが判明し、市民権法改正の動きを加速させることになった。今回の改正によって、全体としては “Citizenship of Convenience”抑止をスローガンに市民権取得要件が厳しくなっている。

市民権取得のためには、これまで申請前4年のうち3年間カナダに居住していれば申請できたが、改正後は6年のうち少なくとも1460日(4年間)、さらに申告する暦年4年間については毎年少なくとも183日カナダに居住していることが必要となった。また、滞在日数の計算においては、従来半日分として数えられていた学生、就労者としての滞在期間は除外され、永住権保有者としての滞在に限られる。また、市民権テスト合格と英語スコアの提出は18歳から54歳の申請者に適用されていたが、改正によって14歳から64歳までに拡大された。

さらに、成人の申請者は市民権申請の際に、カナダに居住し所得税を納める意思を有することを表明しなければならない。これによって、これまで特に問題とならなかったケース、つまり、申請書提出後に速やかに出国しカナダ非居住者となることは虚偽申請と解釈されるおそれがある。尚、虚偽申請を行った場合は最高100,000ドルの罰金か最長5年間の懲役、またはその両方が科せられる。(これまでは1,000ドルの罰金か1年の懲役、またはその両方)最後にこれまで市民権申請においては有料代理人の規定がなかったが、今後は移民申請同様、移民コンサルタント協会 (ICCRC)のメンバーまたは弁護士(その監督下にあるパラリーガル、ロースクール学生)のみが市民権申請の有料代理人になれると規定された。

市民権法改正のもう一つの論点は市民権の取消しについてである。改正後は大半の市民権取消しは連邦裁判所ではなく、カナダ市民権・移民省(CIC)のオフィサーによって判断されることになった。さらに、二重国籍者がテロなどの重犯罪を犯した場合はカナダ国籍を剥奪されるといったカナダ単独国籍者の場合には適用されない条項が加えられたことで、カナダ市民の間で新たな“second-class status”が作られたとの非難の声も上がっている。

話は変わるが、日本は国籍唯一の原則をとっているが、現実には50 万人以上の重国籍者(日本と外国の国籍を持つ人)が存在し、グローバル化に伴いその数は年々増加傾向にあるという。法務省も事実上、重国籍をなくすことは困難であると認めているようだ(参考:大山尚『重国籍と国籍唯一の原則~欧州の対応と我が国の状況~』)。

カナダ市民権法改正について

2015年6月11日付で施行される主な変更内容は以下の通りです。

  • 市民権申請にあたり成人の申請者は、申請日から遡って6年間のうち少なくとも1460日(4年間)、また暦年の4年間について毎年少なくとも183日カナダに居住していることが必要。
  • 14歳から64歳の申請者はカナダに関する基本知識と英語力を有していることが必要。
  • 1947年以前に生まれ1947年1月1日の最初のカナダ市民権法成立時に市民とならなかった”Lost Canadians”は自動的に市民権を与えられる。また、この時カナダ国外に在住し、その間に生まれた子供(第一世代)も対象となる。
  • 成人の申請者はカナダ市民権取得にあたり、カナダ居住し、所得税を納める意思があることを宣誓することが必要。
  • 虚偽申請を行った場合は、最高100,000ドルの罰金及び(または)最長5年間の懲役が科せられる。
  • Immigration Consultants of Canada Regulatory Council (ICCRC)のメンバー及び弁護士(パラリーガル、ロースクール学生)のみが市民権申請の有料代理人になれる。