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カナダ・USボーダーで今起こっていること

今月はカナダ・USの“Safe Third Country Agreement”を取り上げました。

今年になってから連日のようにマニトバ州やケベック州のカナダ・USボーダーを徒歩で越えて、カナダへ不法侵入を試みる人たちの話が報じられている。極寒の雪道を何時間も歩き続け凍傷で指を失いかけたガーナ国籍のゲイ男性の話や、RCMPオフィサーに抱きかかえられ保護される子供たちの写真、また、その人達を助けずにはいられないという住民たちの声。こうした報道に対して、彼らはどうして正規ルートでカナダに入国し難民申請しないのだろうという疑問を持つ人も多いだろう。今回はこの問題と深く関わりのあるカナダ・USの“Safe Third Country Agreement”について取り上げたい。

2004年に締結されたこの協定の目的の一つは、カナダ、US双方で難民申請者の数を抑えることにあった。この協定によりカナダ、US両国は、最初に上陸した“安全な国”を経由して入国を試みる外国人の難民申請を拒否することができる。つまり、カナダは、USから車または鉄道で難民申請を目的にカナダに入国しようとした者を受け入れることなく、USに送り返すことができる。また、USで難民申請を却下され、国外退去命令を受けて本国に返される途中、カナダの空港で難民申請しようとしても受け付けられないことになっている。もっとも、この協定には法の抜け穴とも言える様々な例外規定があり、カナダ市民や永住権を保有する家族がカナダに居住する場合や、18歳未満の子供は難民申請が認められている。つまり、USで難民申請が却下された家族が、子供だけ先にカナダへ送り込み、難民認定をさせてから、親が後に続く方法で永住権を取得する方法も罷り通ってしまう。

さて、現在この協定の見直しが議論され始めている。現状、USに不法滞在する外国人でも正規の入国地を避ければカナダで難民申請が可能なため、リスクを冒して徒歩でボーダーを越える人が後を絶たない。また、予測不可能な政策を打ち出すトランプ政権の下では、今後の締め付けを恐れる不法滞在者だけでなく、合法的なスタータスを持つ特定グループの間でもUSがもはや“Safe Country”ではなくなったと感じる人が増えているという背景もある。

これに対してカナダ政府は今のところ国として具体的な対応をとるほどの数ではないとのスタンスを崩していない。しかしながら、この先気候が良くなりボーダーを徒歩で越える人の数が激増してからの対応で果たして間に合うのだろうか。昨年欧州各国で起こったシリア、イラク、アフリカ諸国からの人々の大移動は、一旦始まってからではその動きを堰き止めるのが困難なことを証明している。政府には現状の法の抜け穴を侮ることなく、もっとプロアクティブな対応を期待したいものだ。