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カナダが必要とするスキルドトレード

日本人には馴染みが薄い“Skilled Trades”という言葉は、通常一人前になるまでに、専門的な教育と一定期間の訓練を要する専門職のことをいう。トレードの職種は、大工、電気技師、配管工、自動車整備士などのガテン系からヘアースタイリスト、シェフに至るまで幅広いが、その職種の多くは州のライセンスを必要とする。石油価格が下落する数年前まで、好景気に沸くアルバータ州などではこのスキルドトレードの人材不足が深刻だった。これを移民で補うために2013年に*スキルドトレードクラスという移民申請プログラムが新設された。その後、景気後退とともにスキルドトレードが足りないという声はあまり聞かれなくなったが、最近のオンタリオ州やBC州の住宅ブームとともに、建設業界での人材不足が再びクローズアップされ始めている。

一方、この間に移民申請を管理するシステムが大きな変貌を遂げた。2015年1月にExpress Entryが導入されてからは個々の申請クラスにおける申請要件を満たしているだけでなく、教育、年齢、職歴、語学力、ジョブオファーの有無等の指標でさらに評価され、総合点の高い順に永住権申請が許可されるようになった。これによって一般的には高学歴や高度の語学力等は、必要とされていないスキルドトレードも、博士号や修士号を持つ人たちと同じ土俵で争うことになり、著しく不利な立場に置かれたといえる。今年に入ってから移民申請の招待(ITA)を受けることのできる最低点(Cut off score)は415から450の間で推移しており、スキルトレードクラスからの申請者は、どんなに熟練工としてのスキルが高くでも高卒の学歴、中級レベルの英語力では全く太刀打ちできない状況を強いられている。

そこで、5月26日にカナダ政府はExpress Entryにおいてスキルドトレードの申請要件を満たす候補者のみをターゲットとした選定 (Draw)を実施した。このときITAを受けた人は400人、Cut offは199ポイントだった。これまで200点台、300点台で半ば移民申請を諦めかけていたトレードの候補者に希望を与えたDrawだったと言える。カナダ政府は今後も移民者のプロファイルのバランスをとるために、予告なくこうした特定グループに配慮したDrawを実施するとみられている。

これと時期を同じくして、オンタリオ州の州指名プログラム(PNP)にも、Express Entryに登録された候補者を対象としたスキルドトレードストリームが新設された。トレードのうちある一定の職種(残念ながら現時点ではシェフとクックは含まれていない)からの申請者にオンタリオ州政府からNotification of Interest(NOI)が送られ、PNPの申請資格を与えられる。PNPで承認されればExpress Entryで600ポイントを取得でき、次回のDrawでのITA取得がほぼ確実となる。

これまでどう査定してもExpress Entryのポイントで400点以上は難しいと判断し、カナダ移民申請を半ば諦めかけている人も多いと思う。しかしながら、カナダ政府は移民者のプロファイルが高学歴、一定の職種に偏らないように、調整を図る方針は今後も変わらないだろう。年一回のチャンスかもしれないが、それを掴むべく努力を続ける人達が報われるよう願わざるにはいられない。

*スキルドトレードプログラムで指定されている職種

カナダの職業分類(NOC)4桁の番号のうち最初の2桁が72、73、82、92で始まる産業用機器、電気、建設、メンテナンス、機器操作、鉱業・農業・製造業・公益事業のスーパーバイザーと、最初の3桁が632及び633で始まるシェフ、クック、ブッチャー、ベイカーが指定されている。