Finnish Success in PISA -フィンランドが伝える教育理念

 
今週はなぜかSélection du Reader’s Digest(9月号)の中にあったフィンランド教育制度についての記事が目に止まった。

別に新しい情報ではないと思いながらも、「ええっ?」といいながら引き込まれた。

フィンランドのEspooと言う町にあるKirkkojarvi Comprehensive Schoolの学長、Kari Louhivuoriが語るフィンランドが成し遂げた教育改革成功への道筋。

フィンランドは、2000年に40カ国以上の15歳の子供達に対して実施されたPISA(The Programme for International Student Assessment)の結果、読解力についてはトップにランクされた。3年後には数学で、6年後には科学でトップに躍り出るという偉業を成し遂げた。

ところが、フィンランドの小学校は7歳まで始まらないという。

「ええ?」と思う。

Kari Louhivuoriが「子供に教育を受ける準備ができていないのに始めてもあまり効果は生まれない。大体そんなにあわてる必要はない。」とコメントする。

フィンランドの教育制度では高校の最終学年に義務付けられているテストを除いて、俗に日本で言うところの中間試験も、期末試験も存在しない。生徒間、学校間、地域内でも、とにかくランク付けも、学力比較、競争が存在しないというのだ。

「ええ?」と思う。

そして、決め手が、一番できる生徒と一番できない生徒の差が世界で一番小さいという。

“We prepare children to learn how to learn, not how to take a test.”

「言うは易し。」と言い返したいところだが、結果を出されている手前そんなことも言えない。

Kari Louhivuoriがまた、「お金持ちでかつ高い教育を受けた両親を持つ子供達は馬鹿な先生にでも教えられる。我々が面倒を見なければならないのはできる生徒ではなく、あまりできない生徒達だ。」

「ええ、そこまではっきり言うのか。」と思わず笑いを誘う。

アメリカはフィンランドから学ぶことはないといい、フィンランドの隣国ノルウェーはアメリカの教育制度を模倣してもうこの10年もの間、PISAでのスコアは上昇の兆しが見られない。

ふと、中学、高校時代何故こんな受験戦争が必要なのかと思った瞬間を思い出す。疑問を持つことさえ許されず、当然を強いられる生活はいつの間にか毎週が、毎月が、毎学期が全て試験で仕切られていた。季節の変わり目までを中間試験や期末試験が教えてくれる時代が義務教育の思い出に変わって行く。そんな時代が多分今でも続いているのだろうか。

フィンランドに続こうとする国々がその成功の鍵を探ろうとする。

Kari Louhivuori曰く、フィンランドは授業料が小学校から大学まで100%政府が援助する。少数クラス、教える側のトレーニングにフォーカスして、教師が実際に生徒に教える時間よりも、授業の準備にもっと時間をかけるという。彼らのマインドには常に教授法を向上させようとする意欲とそれが最終的には国の経済を成長させることに繋がるという信念がしっかり植えつけられている。

フィンランドが語る成功の秘訣はどれも当たり前のことのようにしか思われない。

でも世界の国の多くはそれをなかなか模倣することはできないでいる。

世の中には、軍事力を強化することが国の成長に繋がると信じて疑わない国もあれば、自分が今だに1番だと信じて、そしてそれを維持するために、2番と3番を上手い具合に喧嘩させたりする国や、多くの国民の搾取の上にGDPを上げてもうすぐ自分が1番になると傲慢な態度にでる国もある。

ゆりかごから墓場までをスローガンにする北欧の国々、その中でフィンランドが偉業を成し遂げることができた本当の理由はやり方自体にあったわけではないような気がする。

先進国に限らず、世界の国のトップは多かれ少なから汚職が進んでいる。権力を握った階級層がそれを維持するための手段を惜しまない世界では社会の弱者を保護しようとする動きはなかなか生まれてこない。

フィンランドでは国が政治的に、とりわけ教育面で弱者を保護することが国の成長に繋がると判断した結果、教育を提供する側の質やレベルを革命的な速さで向上させた。そこには純粋にできない生徒をできるようにしたいと心から願う優れた講師陣が存在し、かつ教授法が絶え間なく改善し続ける環境が確立されている。

要するに端的な例をあげれば、一国のリーダーになるかもれしれない人間が、47%の国民は税金を払っていないから、自分の減税策は意味をなさない。残りの53%にターゲットを絞れば選挙戦に勝てるなどと言うようなコメントが公に流れてしまう国ではそんなことはまさしく不可能なのだ。

ここで1つだけ言えるのは、この偉業を成し遂げたフィンランドから世界の国の多くが学ぶべきことは彼らの真似をすることではないはずだ。

大切なのは、国のトップに立つ人たちが、純粋に国民の利益を第一に考えるマインドセットを確立すること。そして、その利益を守る方法が、フィンランドと同様に教育なのかそれとも別の政策が必要なのかは当然国によって変わってくるはずだ。

残念ながら、現状、政府のトップが内心自己の利益だけを第一に考えて、時代錯誤的政策を繰り返していく限り、大きな絵の中で物事を見ることができない、国民の大多数は、方向性を失ったまま、途方に暮れる。

一生懸命やるふりをすれば、自分が生きている間はこの船は沈まない、一国の政府のトップがもしそんなマインドセットを持っているとしたら、フィンランドの将来と明暗を分ける理由もあえて言及するに値しない。

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